TREはどのようにして生まれたのか(開発者/デイヴィッド・バーセリ博士)

TRE開発者 デイヴィッド・バーセリ博士

 

私たちは皆、自らを癒す能力を持っている。人間は、トラウマから回復することで学び、それを超えて進化していくように設計されている。

 

TREはどのようにして生まれたのか? 

 

開発者 デイヴィッド・バーセリ博士は、これまでに世界46カ国の被災地や戦地に赴き、200万人を超える人々をトラウマやストレスから解放し、自由にする活動を行ってきました。

バーセリ博士は、これまでにイスラエル、ケニヤ、イエメン、レバノン、エジプト、スーダン、パレスチナなど9つの国々に住み、戦地や災害地の人々の支援を行い、28年前TRE (トラウマ・ストレス解放法)の開発以来、世界の国際的機関において救済活動を行っています。

 

『ある日、私の患者の一人が言いました。「あなたは週に2時間私を助けて楽にしてくれますが、次に会うときまで私はひとりでなんとか凌がなくてはなりません。あなたがいない間、自分で自分を癒すこのできる方法がほしいのです!」これはセラピストとしての私の胸の中に常にある思いでもありました。

 

私は、レバノン、パレスチナ西岸、イスラエル、ウガンダ、イエメン、エチオペアなど、戦闘や紛争の激しい地域で、セラピストとして長い間働いてきました。レバノンに住んでいた時、爆撃を受けて見捨てられた学校の建物の地下に、出身も文化も異なる7人の人々と数週間閉じ込められたことがありました。爆撃は絶え間なく続いていましたが、爆発音が聞こえるたびに私たちは、本能的にギュッと体を縮めました。胎児のような態勢です。私は仲間を観察しているうちに、自分たちの反応の同時性と正確さに気付いたのです。これは、危機に瀕した時に、文化的背景やどんな社会規範にも関わらず、すべての人間が見せる本能的な反応です。

 

その数年後のある日、アフリカの小さな村で飛行機からの爆撃を避け防空壕に逃げ込みました。大人たちは、小さな子供たちを膝に抱えて守っていました。その時、両ひざに抱いている2歳くらいの子供たちは全身で震えていました。ところが、大人たちは誰も震えていないことに気づきました。そこで私は、大人たちになぜ震えないのかを聞き、大人たちは、震えに対して否定的な考えを持っていることを理解しました。

 

震えは、これまでパニック障害や各種の恐怖症、PTSDや脳疾患などの症状の一部であると考えられ、多くの場合、ネガティブなものととらえられてきましたが、私はこのとき、震えに対するこれまでの見解に疑問を持ち始めたのです。そして研究を進めていくうちに、このような震えは、心と体のバランスを取り戻すために神経組織から生まれる自然の反応であることがはっきりしてきました。

 

私は、世界中の戦争や飢餓、自然災害などの悲劇の中での仕事を通して、文化、言語、宗教、心理的・社会的背景に関係なく、人間はどんなに酷いトラウマを負っても、そこから回復する力を、遺伝子の中に携えていることを学びました。

 

私たちは皆、自らを癒す能力を持っているのです。人間は、トラウマから回復することで学び、それを超えて進化していくように設計されているということに気づいた私は、人間の体を研究して世界中で誰もが使うことのできるトラウマ解放の方法を開発し始めました。そうしてTREが生まれたのです』

 

●参考:デイビッド・バーセリPhD著「人生を変えるトラウマ解放エクササイズ」 (PHP研究所)